sweet vanilla

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ライフログ 映画や本の感想 など

TRICK シーズン1 ※ネタバレあり

後味の悪さを各種豊富に取り揃えております!って感じの品揃えで最高だったな。

こんなに全部が全部、不穏で嫌な終わり方をするドラマだったとは。さすがに覚えてなかった。

 

以下、各回の感想。ネタバレしか含まないのでご注意を。

 

1~3話:母の泉

他の回と比べると後味の悪さがまだマシなように思えるけど、単に最初に見たから印象が薄れてるだけかも。

夜に見て寝て、絶妙に嫌な寝起きだった。

トリックとしては雑な部分も多いように感じる。地震で死んだ男は事故死なのかな?とか。マザーの空中浮遊、上田の研究室でやるの無理があるやろ、とか。上田が気絶してなかったらすぐタネがバレてる。

でもそんなことはいいんですよ、この作品において。重要なとこじゃない。

新興宗教のインチキを明かして、でもそれで誰が救われるのか、という。いいね。

 

個人的に、「人の心が読めるようになったからといって人を救えると思い込んだマザー」のことが好きなんですよね。

傲慢だなとも思うし。でもそれは優しさだったのだと思うし。善意が必ずしも良い方向に進まないってところも哀れで。

彼女の能力の殆どはインチキだったにしても、人の心を読めることは本当なんでしょう。

でも心を読めることと、人を救えることはイコールじゃない。

未来予知ができるわけでもないし、適切なアドバイスをする能力があったかもわからない。

霊能力があることによって自分を信じさせて、自分が「大丈夫」って言うのだから「大丈夫」なのだ、と思わせている。不気味だけど否定もできない。

人智を超えた神のような存在に「大丈夫」と言ってもらいたい気持ちも理解できるんですよね。ほっとするだろうな~と思うし、不安や苦悩の中にいるより、「大丈夫なんだ」と信じることができるなら、実際にそれは大きな救いになるだろうと思う。

ただそれは、薄氷の上にある危うい救いだったわけで、「霊能力なんてインチキだ!」っていう正義感というか使命感のようなものでズカズカ踏み荒らしていいものではないよな、とは思います。とても。

ただもう、「一度入信したら村から出てはいけない、出たら呪われる」なんてルールを課したり、搾取し続けるために人を殺すようになってしまっていたから、それはもう壊さなきゃいけないものだったんだけど。

もし「救いとして健全に機能している宗教」だったとしたら、山田たちの行いってかなり無粋な暴力だったわけで。

主人公たちにヘイトが向きすぎないバランスで、でもその行いの危うさを感じられるのがいいですね!

 

くっそ長文になったけど大丈夫か?このペース配分?ダメかもしれない

 

4~5話 消えた村人

ミラクル三井がもう大好きですね。

シーズン1で登場した霊能力者たちの中で1番好き。

まず見た目がいい。ゴシックなメイク、華美な服装、顔がいい。でももっと若くてイケメンだと美麗になりすぎちゃう。中年男性なのがいいんですよ。哀れっぽさと不気味さが増す。

そして道化のような言動も好き。大げさにシクシク泣き真似をしたり、急にスンッと真顔になったり。大げさな立ち居振る舞い。滑稽さと愉快さがあって、それが逆に怖い。

とか考えてたら、本当に彼って「道化」だったんだなあって話運びで、めちゃくちゃ悲しくなっちゃった。あまりにも哀れで大好きだ……ミラクル三井……。

三井が死ぬ時、山田が三井を抱きかかえながら「ミラクル……ミラクル~~~!!」って叫ぶの、シリアスなシーンなのにちょっと笑っちゃう。それがまた悲しいんだよ。最後まで道化なの。バカみたいなふざけた名前で。

全てがバレてしまってもそれでも、「本物の霊能力者」であろうとしたのも最高。プライド高すぎるんよ。その生き方しか選べない人だったんだな。

彼の人生ってなんだったんだろう。辛い。大好き。クソデカ感情抱いちゃう。三井……。

 

そして!因習村だよ~~~!!ヤッタ~~~!!!

儀式!生贄!最高!!

「大昔にとある女性の子供を奪ってしまって恨まれてるから生贄に子供を捧げて許してもらう」ってもう、罪に罪を重ねていくスタイルなのうける。なんでそうなるんだ。

実際のところ、先に生贄を捧げたい理由があって、後から伝説が付け足されたパターンかもなあ。口減らしとか……。飢饉等で荒れる村人の気持ちを鎮静するためとか。ここはもう本編とは関係のない深読みですが。

 

あとさあ。この回、山田がずっと薄着なんですけど。

あのさあ。ぜんぜん貧乳じゃなくね!?!?!?!?!?!?

この話は終わります。

 

6~7話 霊能力で人を殺す美女

前回の投稿で「山田は美人だけど、キャラクター設定的に美女扱いされないのも納得できる」なんて書いたけどあれは撤回します。

今回の霊能力者が美女として登場して、他のキャラクターたちにチヤホヤされてるのを見て、「なんで山田にはそうしないんだ!!!!」と憤慨しました。

山田が美人じゃない設定は無理があるって。どうあがいてもめちゃくちゃ美人だって。

 

それは置いといて。

2話かけて不気味な殺人を続けて、結局それは「自分が無罪になるためのパフォーマンスだった」っていうのが、ちょっとだけ消化不良だったかな。

良い後味の悪さだな~とは思うのだけど。なんかもっとデカい理由があったのかと思った。無罪になりたいだけなら他にいろいろ方法はあるんじゃないか……?

妹ちゃんに「自分がやりました」って証言をさせるだけさせて殺すのサイコパスすぎて大好きだけど、そんなうまいこと毒で死ぬタイミング調整できるか?とも思うし。警察への心証悪すぎるし。

さすがに無罪放免にはならないんじゃなかろうか。しらんけど。

まあでも普通に3人殺して罪を逃れる難しさと比べたら、合理的な選択、なのか……?
そう考えると好きかもしれない。(???)

 

あと血を浴びる美女はいいものですね。

目がガン開きで怖かった。良い。

 

8話 千里眼の男

この胸糞悪いラスト、小さい時に見てめちゃくちゃ衝撃的で、大好きだったんですよね。どういう趣味してるんだ?

1話で終わる回だけあって、今回の霊能力者はかなり小物で。そのへんに実際にいそうなところがめちゃくちゃ良い。いや良くない。悪質霊感商法ダメゼッタイ。

でも構造としては母の泉のマザーと変わらないんだよなあ。自分の力を信じさせて、希望を与える。

ただ信じさせ続けることができていないから、「病気が治るって言われたのに治らなかった!」っていう被害届が発生してる。

母の泉がそうなってなかったのは、信者を出て行かせないようにしてたからでもあるけど、疑問を持たせないよう信じさせ続ける工夫が徹底してたんだろうな~と。

やるならトコトンだ!!騙すなら相手が死ぬまで騙しきれ!!!一族郎党騙すつもりでやれ!!!!という話ですか?

違いますね。騙しちゃだめだよ。

 

9~10話 父殺しの真相

もうこの最終回を見るためにTRICK見てるまである。あまりにも好き。

山田がずっと追ってた「父殺しの犯人」「本物の霊能力者」が自分自身であるという真相。

これまでトリックのタネ明かしを山田任せにしていた上田が、

「君が犯人じゃないということを俺が証明して見せる」と言う展開。

いやもう胸熱すぎるでしょ。大好き最高ありがとう。

 

でもここでスッキリ納得のいく終わり方をしないのが、堤幸彦~~!!って感じ。

結局、山田に霊能力があるのかないのか、ふんわりとボカされているし

(上田の怪我を治せていたので、霊能力者ではあるんだろう。でも、その力がどういうものなのか、本当にそれは霊能力なのか明言されないし、山田も結局は自覚せずに終わる)

父殺しの犯人は山田だったのか、そうでないのかも、本当のところはわからない。

シリーズ最大のものすごく不穏な謎を解き明かさないまま、不気味さと物悲しさを残して、ゆるく笑えるシュールなギャグと月光と共に締めくくられる。

もうなんかすごいバランスのドラマだよな~~。

 

父殺しの犯人、山田なのかな~~。他にめぼしい人、出てこないもんなあ。

(この後のシリーズで言及されるのかもしれないけど、覚えてない!)

上田が言うように「母が復讐のため、あえて娘に真相を追わせた」のだとしても、結局、山田が犯人ってことを否定はできてない。辛い。

っていうか最後の最後で提示される「真相かもしれない説」が、「山田の母が娘さえも利用して復讐をしようとした」っていうの、もう過去最大に後味悪いのよ。

これまでずっと、仲良し親子としての姿を描いていたからこそ。母と娘の間のシンクロや、不思議で強い絆を描いてきたからこそ。最悪のラストじゃん。

でも否定もできない。里見さん(山田母)、奈緒子の前では父の事件について「忘れたの。時間をかけて、やっと忘れたのよ」って言っていて(辛い)

でも村人たちの前では、「16年間一度も忘れたことはなかった」って言う。辛い。

奈緒子への愛情も間違いなく深くて強いものなのだろうけど。人の顔って一面だけではないね。野際陽子さんハマり役だったわね……。

 

それと。山田、自分が父殺しの犯人であると知ってからずっと絶望の中にいたのに

上田が来てから、いつもの調子を取り戻すんだよなあ。

父殺しではない証拠が出たわけでもないのに。

上田の言葉、その存在によって、普段の「山田奈緒子」に戻れる。

最高だよ。大好きだよ。

 

 

まあわかってたけど、ありえん長文になりました。仕方ない。大好き。