sweet vanilla

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夢日記 祀られた少女

薄暗い場所にいる。
地下室のような、穴蔵のような場所で、四方を土気色の壁に囲まれている。窓がない。灯りはどこから来ているのか。恐らく蝋燭か何かが灯されているのだろうが、光源は記憶の中にない。
しんとしている。私以外に人はいない。いるのは、床に大量に散乱する蛆虫たちだけだ。蛆虫の他には、何かの草、南瓜を少し小さくしたような実、張り巡らされた蜘蛛の糸。それ等で地面のほとんどが埋め尽くされていて、踏み潰さないことには先へ進めない。
嫌悪感を抱きながらも、私は前へ進むしかなかった。友人を助けに来たのだ。
友人とは十代半ばほどの少女である。そのような子供が友人であるからには、私の年齢も夢の中では幼くなっていた可能性がある。

友人は何らかの事情で、この部屋の奥にある祭壇に祀られてしまった。

神だか巫女だかの役目を背負わされたようだった。


なんとか祭壇の前にたどり着く。特段に厳かではないが簡素でもない。何せ知識のない私の夢の中なので、造りはかなり曖昧なものだ。

祭壇の中は暗く、なんの姿も見えない。

 

友人の名を呼んでみる。
返事はなかったが、しかし彼女は暗がりから姿を表した。
私はぎょっとした。

彼女は全身を草の葉で覆われていた。花や実はない。ひたすらに緑の、葉や蔦が彼女の体中に巻きついている。中に服を着ているかどうかすらよく見えない。明らかに人為的に、何らかの意図を持ってそうされていた。儀式的な意味があるのだろうか。
私がぎょっとしたのは彼女の姿のせいでもあったが、それより彼女の表情、顔つきに驚いていた。彼女は呼ばれて現れたにも関わらず、全く私のほうを見てはいなかった。

黒塗りの瞳。何の感情も伺えない。
彼女は正気でなかった。けれど発狂しているのとも違う。彼女はぼうっとしていた。知能や自我が欠落しているように見えた。けれど呼ばれれば来る、ということが逆に恐ろしかった。既に、彼女が神だか巫女だかの役割そのものの人となってしまったように思えた。いや、人というより器だ。

彼女の体という容器に、私の知らない何かが入っている。

それはもう友人ではなかった。

 

何と声をかけたものかとためらって、ふと周りを見ると、部屋中に子供がいた。

いつの間に入ってきたのか。入ってきた、というより、最初からそこにいたように思えた。
突然にそこにいたという不気味さを除けば、子供たちは至って普通の様子で、賑やかに談笑している。
そして私は子供らと共に、儀式めいた踊りに参加していた。気がつくとそうしていた。

このあたりは夢特有の、ぶつ切りの場面転換である。
踊りの中で、子供たちと私は互いの肩や膝をさすり合う。その体の部位を神様に取られてしまわないようにするおまじないなのだと、子供の一人から聞いた。随分と物騒な神様だ。

しかし私は誰からも右肩をさすってもらえないまま、踊りが終わってしまった。このままにしておくと、私は右肩を神様に取られてしまうのだ。

 

神様とは誰のことなのか。私の友人だった少女だろうか。それとも別の。
何も分からないがともかくここで夢は終わる。

続きや事の真相を誰も語ってはくれない。